vol10 レースはいつスタートするんだ?

「でさ、肝心なことだけど、レースはいつからはじまるの?」

マシンを用意したのはいい。ただ、オレが出ようとしているのはノーマルクラスのレースではない。出場するためには当然準備が必要で、色々と段取りがある。そのためには通常、最低でも2ヶ月くらいは必要だ。何しろパーツは「ひとつもない」のである。去年まで使用していたマシンのパーツを流用することなど出来ない(ここで例えば川島さんに電話して「すいません!ホイル貸して下さい!」などといっても、GSXRのものは使えない………)。まさしく「イチ」から作り出さなければならないのだ。青さんのチームも600を走らせているものの、1000に関するデータはほとんど持っていない等しい。果たしてこれで、いつからレースに出場出来るだろう?普通はそう思うはずである。ただ、オレは自分がフツーかどうかにあまり興味がなかった。興味があるのは、自分のスピード推移だけだ。

「………ごめん青さん、レースまで一ヶ月ないんだ。5月21日には決勝だよ」

これまで数々の魑魅魍魎をまとめてきた青さんも、さすがにこの一言には絶句していた。だが、オレは機関銃のように話し続けた。大丈夫、そんなにバッチリイジらなくても勝負は出来るはずだからさ、レース用フルパワーにしてタイヤとサス決めればチョンだよ………。

「………ん。まあ、やるだけやってみるか」

人物表情図鑑なるものが存在したとして「苦渋に満ちた笑み」というタイトルがあればまさにこの顔だ、という表情で青さんは微笑んだ。これでようやく準備のための下地が整った。オレのやりたいレース、それは………。
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by kei74moto2006 | 2006-05-08 05:40 | 2006-07 もてぎ選手権


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